画期的なスマートシティ構想として
2021年、突如としてスマートシティ構想の一環として、新型コロナ療養施設都市が作られた。
帰宅困難区域を再活用
場所は10年前の震災と事故で帰宅困難区域をなっていたところ。
この構想の為に除染作業が進められ、大量の人数受け入れが可能である。
対象者の輸送は”自動運転バス”
陽性と判定された場合、そのまま各病院から自動運転のタクシーによって一定の集合場所へ集められ、スマートシティ都市まで一直線に結ばれていた道路を自動運転のバスにより輸送されていく。
各部屋へ専属ロボットが割り当て
部屋にはベッド、トイレ、バスルームのみ。明かりとりの窓があるのだが、外に出ることは出来ない。
定期的にロボットがやってきて、検温、食事の配膳をしてくれる。
部屋の清掃はセルフサービスだ。シーツ類は選択式になっており、交換が必要であればロボットが運んでくれる。
そこに青空は無い。謎の壁に仕切られている
部屋は2階建てになっており、階段を上がるとベランダがある。
しかし・・・外の空気は吸えるのだが、空は見えない。
四方八方が明かりしか通さないすりガラスのようなもので覆われていて周りの様子が全く分からないのだ。
ただ、夜だけは星空を見ることが出来る。
情報類は完備、しかし発信は全く出来ず
入室の際に専用のタブレットが渡され、情報類はそこから入ってくる。
インターネットにも接続は出来るようだが、使えるソフトが限定されており、こちらからインストールは出来ない。
そして、メール類が一切出来ない。こちらからコメントを打ったりしても、「コメントは受け付けられませんでした」とはねられてしまう。
症状に応じて”部屋ごと”移動
症状が悪くなって数日後。
地震か?と思う衝撃で目を覚ますと、何と部屋ごと何かに載せられて運ばれているようだ。
20分ほど走って止まり、部屋ごと据え付けられる感じがした。
そう、そして2階への通路は封鎖され、本格的に隔離されたのだった。
非常ボタンは”飲んだら死ねる薬”の投与依頼
ロボットもタイプが変わり、検査項目も増えた。
タブレットにソフトが増え「非常ボタン」と書いてある。
注意書きには”もう駄目だと思った時に押してください。飲んだら死ねる薬をお渡しします。”と。
もはやこれまでか・・・。
私はボタンを押し、出された薬についてきた「辞世の句」という栞にしたため、それを飲んだ。
最期はそのまま部屋ごと”焼却”
生命反応が無くなったことを感知すると、その部屋は再び移動していく。
奥地にある焼却施設に運ばれ、部屋ごと焼却されていくのだ。
そして、存在もなかったかのように、皆忘れ去られていくと。
そう、この物語は、あの世で書かれたものなのだ。