浜松市の中心部から北西へ、浜名湖のほとりにある舘山寺地区は有数の温泉街であり、遊園地パルパルや、動物園、フラワーパークといったレジャー施設も揃っています。
「日本で唯一の”湖上を渡るロープウェイ”」として有名な”かんざんじロープウェイ”の乗り場の隣にあるのが今回紹介する「ルーベラ」です。
2019年10月から店舗の経営を引き継いだという袴田様にお話を伺いました。

☆中で使用している写真は全て筆者が撮影したものです。

ルーベラについて

店舗外観

Q.袴田様は2019年10月にルーベラをリニューアルオープンされたということですが。

A.ご縁があり、前オーナーから店舗の経営を引き継がせていただくことになりました。

静岡県出身、大学からは東京で、事業継承を機に地元に戻る

リニューアルオープンしたルーベラには工房手作りのオリジナルアクセサリーが並ぶ

Q.ここに来られるまではどちらにおられたのでしょうか?

A.幼少期はこの遠州地区で過ごしました。大学入学を機に上京、社会人になってからも東京におりました。
高校の教員として社会人のスタートを切り、その後PR会社を経て、ビジネススクールやインターナショナルスクール、電子書籍の会社の広報などを担当してきました。広報やマーケティングに加え、M&AやPMIも実務を通して経験することができました。

会社員であり続けることに疑問を感じて独立を目指す

店舗へは遊園地パルパルからも入れるので、お土産品として買う方も多い

Q.それだったら結構順風満帆だったのではないですか?

A.う~ん、会社員としてやっていく中でだんだん限界を感じるようになってしまったんですよね。企業特有の”社内政治”を意識しながら働くことに疑問を持つようになりました。それに社会環境がどんどん変化していく中で、会社員として働き続けていくことの先に何があるのかがわからなくなってきていました。
特にビジネススクール勤務時代は同僚や学生さんから多く刺激を受けたと思います。自分の力で羽ばたいていく人たちに囲まれている中で、いつかは自分も事業をやってみたいと思うようになり、大学の講義を受けたり、本を読んだり、コミュニティに入ったりと新しい道を模索し続けていました。
その中で

  ① 0から1を作るように、全く新規起業をする。
に加え、
  ② 既にある事業を承継する

という選択肢もあることがわかりました。
せっかくいい事業を運営されているのに後継者不在という理由で廃業される会社も少なくないという事実や、そのことが地域経済に与える影響も小さくないことも知りました。
PR会社時代から地域活性化をお手伝いする機会も何度かあったのですが、地域の可能性を模索する仕事はとても楽しかったし、いつかは地域に貢献できる仕事をしたいと漠然と考えるようにもなっていました。そんなことが重なり、②の事業を承継するという選択肢を真剣に考えるようになったのです。

事業承継センターとの出会い

Q.会社って個人でのM&Aも出来るんですか?!そうなると手続きを踏む上で相談窓口がちゃんとあったということですね?

A.そうですね、インターネット上のプラットフォームや各県にある事業承継センターなどに、いろいろな会社の情報が入ってくるようです。そういったものを利用して調べました。
それが2019年の1月か2月くらいで、10社ほどの社長さま、オーナーさまと面談をさせていただいて、その活動の中でルーベラとも出会いました。静岡の事業承継センターからの紹介だったのですが、そこからずっとサポートしてもらいました。

静岡県事業承継センターのサポートあってこそ

Q.この事業承継センターではどんなサポートを受けられ、どんな印象を持ちましたか?

A.完全に私個人の主観ですが、静岡の事業承継センターはすごくしっかりサポートしてくださるので、安心感は日本でもトップクラスではないかと思いましたね。
事業承継センターというシステム自体がこの静岡から始まったというだけあって、スタッフの方も親身にサポートしてくれました。他の地域でここまで手厚いサポートはないのではないかと思ってしまうくらいです。
地元の商工会議所や日本政策金融公庫にも積極的に話をつないでくださったおかげで、非常にタイトなスケジュールであったにもかかわらず、なんとか10月に事業をスタートさせることができました。

超タイトなスケジュールでのリニューアルオープン

Q.そこから開業に至るまでの苦労したことはどんなことでしょうか?

A.まず、オープン前に私がほとんど店に足を運べなかったことは大きいですね。
GW頃から交渉をはじめ、最終的に契約締結したのが9月14日です。
当時私は東京で会社員をしておりましたが、なんとか9月末で退職させてもらってすぐに浜松に引っ越し、10月11日にリニューアルオープンという、普通に考えたら絶対にありえないスケジュールになってしまいました。
前職の皆様にも、浜松でサポートしてくださった皆様にもただただ感謝しかないですね。

いきなりPMIの難しさに直面

舘山寺温泉にちなんだものも。すぐ隣には華咲の湯もあります。

Q.承継に伴って少しだけリニューアル期間がありました。スタッフの方は残って続けられたのですか?

A.前のオーナー時代からの従業員が3名残ってくださいました。私の都合で引継ぎ期間も十分に取れなかったため、1つ1つが手探りで、みなさんには本当に迷惑をかけてしまったと反省しています。
企業がM&Aを行った場合、M&Aの手続きが完了してからそれまで2つだった組織を1つにまとめていく一連の流れをPMI(Post Merger Integration)というのですが、超小規模とはいえ、いきなり、しかもたった一人でPMIの困難に直面した、という感じでしたね。

オープン前にはほとんどお店に顔を出すこともできず、いきなり現れて来週から営業再開します、ではさすがに従業員の不信感は大きかったでしょう。まずは信頼関係を構築したいという思いもあって、最初の3ヶ月はほぼ休みなくお店で働いていました。

自分はモノ作りよりも環境作り

Q.オーナーになって最初に行ったのはどんなことでしょうか?

A.まずは今までお店がどう運営されていたのかを勉強することからですね。
前オーナーや店長にご厚意に甘えさせていただきながら、また残ってくださった従業員に教えてもらいながら、なんとかお店のことがわかったな、と思えたのは12月になってからですね。そこからやっと次の手を考えはじめようとなってきた感じです。
承継する前からわかっていたことですが、お店のある舘山寺はいわゆる観光地で、季節による集客人数の落差が激しいです。そのため、閑散期にどうやってお客様にリーチするか、エリア外のお客様にどうやって伝えていくか、というのが大きな課題の一つです。

また、私はPR出身ということもあり、まずは「ルーベラとは何者なのか?」について真剣に考え定義する必要があるとも考えていました。どういう商品を扱うのか、お客様に何を提供するのか、なぜここに存在しているのか、そんなことでしょうか。舘山寺や浜名湖ならではの商品開発にも取り組みたいですしね。そのあたりを考えはじめる余裕ができてきたのは本当に最近ですね。

当たり前ですが、上記のような大枠の課題とは別に日々の経営があります。
会社では部署ごとに分業していた、総務、人事、経理、広報、購買、経営企画などの管理系の業務を、事業運営にプラスして全部自分でやっていかなければいけないわけです。
その各業務の中で日々問題が起き、「あ、また問題がおこった」と目の前の課題に必死に取り組んでなんとか乗り切ったと思った瞬間に次の問題が起こるんです。
浜松は私にとっていわばアウェーの場所だし、当初はお店の中でもアウェーな感じでしたから孤独と戦いながらただひたすらに黙々と取り組むしかなかったですね。そんな状況ですから、マーケティングや商品開発なんて考えている余裕は一ミリたりともありませんでした。出張で行った東京から泣きながら帰ってきたなんてこともありました(笑)。

そのような環境の中で、まずはできることから少しずつ手をつけはじめています。承継前に思い描いていた大きな画の中の、1ピースの何分の1くらいのレベルくらい小さなことからという感じですね。SNSを整備し始めたり、オンラインショップを立ち上げることでリーチを増やせる環境を整えたりということに着手しはじめています。

また、ルーベラらしさということで、ルーベラ工房のスタッフ手作りのルーベラオリジナルアクセサリーにも力を入れはじめました。
デザインやアイデアはすべてスタッフに任せ、売上に応じてインセンティブとしてお戻しできるようなシステムを作ることで、お店にどんどんオリジナルアクセサリーが並ぶ仕組みができてきたかなと思っています。
スタッフはみんなモノ作りが好きなので、積極的にいろんな商品の提案をしてくれます。良い提案をしてきてくれるのでどんどん任せていきたいと思っています。

体験工房という特徴を生かしたブランディングを目指したい

スタッフ手作りのルーベラオリジナルアクセサリーは作者ごとに個性が異なる

Q.パワーストーンをはじめ、時期的なひな祭りにちなんだものもあるなど、商品数は結構多いですね?売れ筋とかも見えてきましたか?

A.雑貨の取り扱いも多いのですが、店のアイデンティティを確立させるという観点からも、家族で楽しんでもらえる体験を中心にブランディングしてみたいですね。商品の点数ももう少し絞り込んでもいいかなと思っています。
スタッフ手作りのルーベラ工房作品は、前述のとおりインセンティブの仕組みを作りました。そのせいかわかりませんが、スタッフはモチベーション高く楽しく作品づくりにあたってくれています。

また、入口付近には地元浜松に関する商品(遠州綿袖など)を置いたりしていますが、今後浜松地域の伝統工芸について広げていければいいですね。そういった伝統工芸の制作に携わる方たちとも積極的に交流していきたいと思っています。

出張工房を通じて

体験スペースでは8種類の体験が可能・詳細はホームページで

Q.体験工房や出張工房のほうはうまく行ってるのでしょうか?

A.体験工房は約40席ほど用意しているのですが、多いときは1日中満席状態になります。
出張工房は10月からでも3~4回出させていただきました。毎回好評で、付き添いでいらした親御さんが「私も作っていいですか?」と一緒に楽しんでいただくことも少なくないです。今後も近くの子供会とかケアホームとかに提供していきたいと思っています。
特にご高齢の方に手を動かしてもらうことは認知症の予防にもなりますし、単純にカラフルな素材を楽しんでほしいです。こういった取り組みももっと数をこなして沢山の人に広めていきたいですね。

舘山寺はまさに観光地・季節や曜日で雰囲気が異なる地域

地元の特産品スペースを作って販売

Q.お店に来られる客層はどんな感じなのですか?

A.一番多いのはファミリー層で、親子3世代でいらっしゃる方も少なくありません。30代くらいの夫婦とお子様、それにおじいちゃんおばあちゃんという感じで、ルーベラに来てくださるご家族はみんな仲がいいなあとこちらもほっこりさせていただいています。
あとは20~30代のカップルや大学生グループ、大人の旅行者などですね。
平日は2人体制で店を切り盛りしてますが、繁忙期の正月とかは5人体制にするなど、平日と土日祝日では地域もお店も雰囲気が変わりますね。
GWや夏休みはまだ未体験ですので、どうなるんだろう?とドキドキです。夏、舘山寺の花火大会はこのへんが一番盛り上がるタイミングみたいなので楽しみです。

静岡や名古屋からだけでなく、関東関西の人がくる仕組み作り

Q.東京からこちらへ来て、この地域の観光における課題とかはありますか?

A.お客様は静岡から名古屋の間くらいの近郊地域の方が多いように思います。関東からの方も時々お見えになりますが、関西は少ないのかなと感じています。
舘山寺は昨年3月にスマートインターチェンジが出来て高速のインターがとても近いエリアです。関東からも関西からも高速を使えば4~5時間、新幹線+バスや車なら2時間半~3時間で来れると思います。
もう少し情報を発信して舘山寺のことをもっと知ってもらわないといけないですね。ホント勿体ないことだと思います!
周辺地域との連携もしつつ、お客様のニーズに合わせながらうまくPR出来ると良いなと思っています。

3年くらいをメドに新しい事業も考えていきたい

Q.今後の展望、目標を教えてください。

A.このお店は既に私がいなくても日々の運営はまわせるようになっています。今後はもっと外に出て、新しいお客さまとの接点を作っていく役割を果たしたいです。そしてルーベラの仕組みが徐々に整っていけば、この地域に限定せずに他の新しい事業に挑戦したいですね。

舘山寺の活性化・浜松や周辺地域の活性化

弁天島の鳥居に沈む夕陽

Q.となると、地域の活性化というのも早くかかわっていく必要がありますね?

A.忙しくてお店から出られない状況をようやく打開しつつあるので、外での人脈づくりやPR活動にも力を入れていきたいと思っています。
観光協会などに挨拶をしたりしながら、野心のある人と出会って刺激を受けたり、夢を語り合って実現させたりしたいですね。

浜松を活性化させていける仲間とつながりたい

Q.なかなかそういう野心のある人とは出会えないものですか?

A.静岡は割と保守的な人が多い地域かなと感じることはありますね。今はまだビジネスでのリレーションをここ浜松で構築中といったところですので、やはり今同じ目線で話をする人は東京で交流のあった人たちがどうしても多くなってしまいます。地域活性化について話をすることも好きですので、浜松でも人間関係を広げていきたいと思っています。見かけたらぜひ声をかけてください!

本日はどうもありがとうございました。


地図・ホームページ

 


ルーベラのホームページ

営業時間 9:30~18:00
定休日 木曜日(但し年末年始等は営業します。詳細はホームページでご確認下さい)

駐車場は店舗前と店舗を背にして30Mほど先の入口から、フェンスの向こう側のスペースへ。

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