

富良野駅のホームで、列車はやや長めの停車時間を取る。
スキー客の乗車も思ったほど多くなく、車内には静かな空気が流れていた。
ここから先は、函館本線と合流する滝川まで、根室本線をさらに西へと進む。
東鹿越からやってきたキタキツネのラッピングをまとったキハ40が、単行で雪原を走る。
床には靴についた雪が溶け、小さな水たまりができている。
冬のローカル線らしい光景が、車内に広がっていた。
滝里ダムに消えた旧線と野花南駅


富良野を出ると、列車は空知川沿いを縫うように走り、次の野花南まで約18分を要する。
途中、列車は長いトンネルへと吸い込まれていく。
この付近には、かつて滝里駅という停車場が存在していた。
しかし滝里ダムの建設に伴い1991年に廃止され、路線はトンネルによる短絡ルートへと付け替えられている。
ダムの底に沈んだ旧線の記憶を思い浮かべながら暗闇を抜けると、野花南の小さな駅舎が現れた。
JR北海道のロゴを掲げた白と緑の外壁。
除雪機がひとつ、雪に埋もれるように静かに置かれている。
単線区間の行き違いとローカル線の魅力



やがて上芦別駅では、富良野方面へ向かう列車との行き違いが行われた。
こうした小さな駅でも交換設備が生きているのは、単線区間ならではの光景だ。
芦別の大仏と移りゆく街の風景


芦別駅に差し掛かると、車窓のはるか遠くに白い巨大な人影が目に入る。
バブル期の観光開発の象徴として建てられた大仏である。
かつてこの街を賑わせた時代の面影は薄れ、駅の利用者も多くはない。
それでも、あの白い巨像だけが、静かに雪原を見下ろしていた。



平岸、茂尻と通過するにつれて、空は少しずつ明るさを取り戻し、
雪原の向こうに住宅の屋根が増えていく。
赤平駅、炭鉱の記憶を残す街



やがて到着する赤平駅は、沿線の中でもひときわ存在感を放つ主要駅だ。
レンガ造りの駅舎と交流センターが一体となった建物からは、炭鉱の街として栄えた往時の気概が伝わってくる。
ホーム脇に残る錆びた上屋の鉄骨が、どこか誇らしげに佇んでいた。
東滝川駅と変わりゆく鉄道の姿

赤平を過ぎると、列車は空知川を渡り滝川市へと入る。
川面には薄く氷が張り、冬の終わりを感じさせる流れが続いていた。
東滝川駅。
訪れた2021年当時は停車駅として機能していたが、2025年3月のダイヤ改正で信号場へと格下げされている。
このときは、ただ通過するだけの小さな駅だった。
しかし旅を振り返ると、あの駅標が記録として残っていることに、不思議な感慨を覚える。
滝川到着、根室本線の終点へ



やがて右手から函館本線の線路がゆっくりと近づき、並走を始める。
複数の線路が並ぶと、列車は滝川駅1番線へと静かに滑り込んだ。
函館本線のホームとは少し離れた場所に位置するこのホームが、根室本線の終端である。
新得を出発してからここまで、代行バスを含めれば半日がかりの旅。
- 山越え
- 凍りついた湖
- 廃線の予感
- 炭鉱の残影
- 信号場へと姿を変える駅
北海道の鉄道が歩んできた歴史のすべてが、車窓の中に凝縮されていた。
滝川駅の構内に立ち、ようやく長い旅の終わりを実感する。
静かな余韻が、いつまでも心に残り続けていた。


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