無造作に封を破いて、中身を取り出す。
ごくごく普通に白い糖衣錠が一錠。
同封されていた説明書には、ネット上にあったものと同じ文書。

『サンプル版は48時間あなたの存在を消します。
有効期限までにお飲みいただかない場合は効果はありません。
飲んでから48時間、全ての人はあなたのことを忘れます。
そして、目が覚めた時、いつものように思い出します。
でも、その48時間のことについては誰も触れません。
もし、永遠の機能をお求めになりたい場合は、有効期限の3日後に送られるメールをご覧ください。』

カレンダーを見る。
そうか、今日はプレミアムフライデーだった。
48時間。。。日曜日の夜中までか。

寝る前にコップ一杯の水で飲んで眠りについた。

 


いつものように目が覚めた。
いつものように携帯のロックを解除すると、未読のものがほとんどない。
LINEの未読もいつもなら30くらいあるのに、3つくらいだ。

どういうこと?

未読を読んでみる。いつものおはよう挨拶のLINEだ。
あれ?発信日・・・?!
慌ててカレンダーに目をやる。

月曜日? 月曜日なの???

え? 出勤しなきゃ!!!

慌てて仕事へと向かう。
そして忙しくて、自分のことを考えてる余裕なんかないまま帰宅。
いつの間にか寝ていた。

いつものように目が覚めた。
いつものように携帯のロックを解除すると、未読が30以上ある。
おかしい・・・?
あの週末はいったいなんだったの?
私の記憶もないし、その2日間だけは誰からも連絡がきてない。
毎日届くメルマガも土日分だけ届いてない。だけど今日の分は届いている。

何人かにLINEしてみる。「ねぇ、こないだの週末、私に連絡した?」
”え、特にしていないよ。他の用事で忙しかったし”

「ねぇ、いつものグループLINE、週末だけ届いてないんだけど?」
”え、普通に送ってるよ!電波状態悪かったのかな?もう1回送るね”

「日曜日の写真見たよ~!あの店私も行きたかったのに~!なんで誘ってくれなかったの?」
”・・・? あ、そっかー、誘ってなかったかも!ゴメンゴメン、何か揃った感じがしてたんだよね”
「そんなー!!ちょっと聞いてよ、実はね・・・」

(あれ?打ちたい言葉が打てない・・・声も出せない)

文字を消して別の話題を出したら入力出来た。。。

過去に撮ったはずのスクリーンショットもいつの間にか無い。
そして、ゴミ箱に入っているはずの封筒も説明書も消えている。


怖い・・・怖い。

【効果はお分かりになりましたか?】
いきなり通知がきた。
『いかがでしたか?48時間あなたの存在が消えたということがお分かりになりましたか?
この薬はあなたの存在を肉体的に、そして他の人の記憶からも消し去ります。
この世の中から完全に消えたいと思った時には、こちらに連絡ください。
次にあなたが寝るまでに連絡がない時は、この記憶は全て消去され、疲れから48時間寝落ちしていただけになります。』

何も書いてないけど、きっと心の中で思ったことまでコントロールされているんだ。このことを伝えようとするとブレーキがかけられてしまう。

どうする?どうするの?
涙が止まらなくなった。


「おはよう!今日も元気に頑張ろうね!一度は死を選びかけた命、だから自分のやりたいことを楽しんでいこうよ!」
何?この宛先不明のメール?

でも、確かに今日の私は何か前向きだ!

「飲んだら死ねる薬のお試し版②」に1件のコメントがあります

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