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根室本線 冬の旅記|代行バスで越える狩勝峠と東鹿越〜富良野の車窓

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旅行遂行士による乗り降り旅
旅行遂行士による乗り降り旅
根室本線 冬の旅記|代行バスで越える狩勝峠と東鹿越〜富良野の車窓
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2021年3月10日。新得駅にて

新得駅のホームに降り立つと、行き先の案内板には「代行バス」の文字があった。
2016年の台風による大雨災害から5年が経過した今も、新得〜富良野間の一部区間ではバスによる代替輸送が続いている。

しかし皮肉なことに、この代行バスこそが、狩勝峠を越えていく本来の“旅らしさ”を体感させてくれる存在でもある。
窓の外には雄大な峠の景色が広がり、鉄道では味わえない高さからの眺望が続く。

途中、落合駅付近では、バスの車窓から錆びついた駅舎と線路が見えた。
かつて列車が走っていた証が、静かに雪の中に佇んでいる。

そして、映画「鉄道員(ぽっぽや)」の撮影地として知られる幾寅駅。
ロケ地の面影を残す駅舎には観光客の姿もなく、地元の高校生が数人利用するのみ。
スクリーンを彩ったあの感傷的な風景が、いま静かにそこにある。


東鹿越駅でキハ40に乗り換え

代行バスが東鹿越駅に到着すると、ホームには一両のキハ40系が待っていた。
車体にはキタキツネのイラストが描かれ、いかにも北海道らしいラッピングが施されている。

行き先板には「東鹿越-富良野-滝川」の文字。

東鹿越駅は本来、廃止対象となるはずだった小さな無人駅だ。
しかし折り返し設備を持つという理由から、路線廃止の日まで生き残るという珍しい経緯をたどっている。

代行バスからの乗り換え客や鉄道ファンなど、車内には20人ほどが乗車。
それでも転換クロスシートには余裕があり、ゆったりと座ることができた。

発車すると、単行のディーゼルエンジンが雪原に低く響く。


凍てつくかなやま湖と小さな駅たち

10分ほど走ると、かなやま湖が視界に広がる。
凍りついた湖面は一面の白。その奥には雪をまとった山並みが幾重にも重なる。
北海道の冬にしか出会えない、静謐な絶景だ。

やがて列車は金山駅に停車する。
名古屋近郊の金山駅と同じ名前だが、こちらは乗降客もまばらな静かな山間の駅。

続いて下金山、山部、布部と、小さな駅をひとつひとつ丁寧に拾いながら進んでいく。
駅名標に並ぶ隣駅の名前が、これまでの旅の軌跡を地図の上に浮かび上がらせる。

やがて車窓にはスキー場のゲレンデが見え始め、富良野の街が近づいていることを告げていた。


富良野到着、そしてこの路線の未来

富良野駅に到着すると、ホームは一気に賑やかになる。
スキー客や観光客が乗り込み、車内の空気が一変した。

東鹿越からわずか30分足らずの乗車時間。
しかしその短い区間に、

  • 廃線の予感
  • 代行輸送という現実
  • 凍てついた湖
  • 名もなき小駅の風景

北海道の鉄道が抱えるすべてが凝縮されているように感じられた。

新得〜富良野間が正式に廃止となったのは2024年4月1日。
いつかまた、あの代行バスの車窓と雪の中に佇む東鹿越のホームを、懐かしく思い出す日が来るだろう。

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