塩尻駅にて
2021年3月14日 夜。
長い旅も、いよいよ最終章を迎えた。
塩尻駅の改札内には、あずさ号の運休を告げるアナウンスが繰り返し流れている。
自然災害による運休であればまだ納得できるものの、信号機の故障と聞くと、どこか気持ちの整理がつかない。
ホームでは、長野行きの普通列車へ乗り換える人々の姿が目立っていた。



塩尻駅の夜と駅そばの一杯
発車まで少し時間があったため、駅構内のそば屋へと足を運ぶ。
閉店間際だったが、なんとか山菜そばにありつくことができた。
夜の塩尻は風が冷たく、温かい汁が体の芯まで染み渡る。
旅の疲れを静かに溶かしてくれるような、素朴な一杯だった。
駅そばというのは不思議なもので、どこで食べても旅の記憶と結びつき、妙においしく感じられる。
特急しなの24号、旅のラストラン


ホームへ戻ると、夜の闇の中からヘッドライトが近づいてきた。
特急「しなの24号」名古屋行き。オレンジのラインをまとった383系、8両編成での入線だ。
乗車券は塩尻から浜松まで。経由は中央西線・新幹線・東海道本線。
特急券は塩尻から名古屋まで1,360円。2号車10番A席。
旅の終わりを告げる、最後の切符である。
車内は落ち着いた雰囲気で、隣席にはすでに先客がいた。
シートに身を沈め、この数日間で撮りためた写真を一枚一枚見返していく。
- 地震の影響で徐行運転した東北新幹線
- 廃駅が一気に進む宗谷本線
- キハ54系で巡った釧網本線
大人の休日倶楽部パスと週末パスを駆使した7日間。
走馬灯のように、旅の記憶が蘇ってくる。
夜の中央西線、木曽路を越えて
列車は木曽の山中へと分け入っていく。
トンネルと渓谷が交互に現れ、窓の外は漆黒の闇。
中央西線の険しさは、昼間よりも夜のほうが、より強く感じられるかもしれない。
名古屋へ、そして日常へ



中津川を過ぎると、単線の山岳区間から複線の平野区間へ。
列車は一気に速度を上げていく。
行き先表示に「中津川」とあったのが、いつの間にか「名古屋」へと変わっていた。
少しだけ眠ってしまっていたようだ。
千種では地下鉄へ乗り換える乗客が降り、車内はさらに静けさを増す。
やがて、聞き慣れたJR東海特急用のチャイムが流れ始めた。
金山で東海道本線と合流すれば、名古屋はもうすぐだ。
名古屋からは、N700S系新幹線で浜松へ。
2020年7月にデビューしたばかりの新型車両が、旅の締めくくりを飾る。
長い旅が、静かに日常へと戻っていく。


コメント