収録日:2020年4月30日 
岡山市・私立朝日塾小学校教諭の佐久間賢志先生をお招きして、コロナ休校がいつまで続くか分からず対応に苦慮されている先生方へ、オンライン教育が動き出すまでのエッセンスについてお話いただきました。

佐久間賢志先生について

私立朝日塾小学校教諭、3月までは5年生、現在は4年生を担当。
NPO法人学修デザイナー協会理事。

実際の動画については、こちらをご覧ください。

全職員、全学年でオンライン教育を行えるようになるまでの取り組み

(中村)本日は佐久間先生より、休校要請が出る中いち早くオンライン化に取り組まれる中で、どのようにやってこられたか、その中でどんな課題(ヒト、モノ)があったのか等についてお話いただき、休校が続く中での今後の取り組みの参考になればと思います。

休校要請に踏み切る頃の状況

休校をあらかじめ想定して体験会をした日の夜に休業要請

(中村)
まずは、安倍首相より3月からの全国の学校への休校要請が出ました。
先生はあらかじめ休校になることを想定してオンライン化に向けての準備を始めたその日の夜に休校要請が出たと伺っておりますが、具体的にどのような感じだったのでしょうか?

(佐久間)
2月27日にとりあえずZoomを職員みんな使えたほうがいいんじゃないの?という感じで体験会をしたんですよ。
そうしたらその日の夜に休校要請が出たので、28日には大慌てでしたが、土曜日(29日)があったので間に合わせるべく準備をしました。

まずは5年生を対象にZoom朝の会をやってみる

(中村)
それがこの当時としては素早い取り組みと思われますオンラインでの朝礼というか朝の会といった取り組みであったわけでしょうか?

(佐久間)
その時にオンライン朝の会(任意)という文書を75名の5年生保護者あてにプリントして配らせていただきました。
このまま授業がずっと出来ないかもしれないから、とりあえず繋がっておきましょう、そしてZoomというアプリを使いますという保護者向けの提案の文書を作成し、とりあえず5年生でまずやってみますということで校長の決裁をいただきました。

当時保護者に送ったプリント

まずは個人の出来る範囲で試してみる

(中村)
この当時の状況を振り返ってみますと、どこの学校もまだ慌てふためく中、学校全体での取り組みというよりは、まずは佐久間先生個人の考えによる取り組みという感じなのでしょうか?

(佐久間)
そうですね。文書に貼ったQRコードも私の個人のメールアドレスでした。
すると75名中半分くらいの35~6名が登録をしてくれました。
取りあえず春休みまでの2,3週間くらいの休校になるので、その間のプリントを用意しておけばいいのでは?という先生が大半ではありましたが、子供たちが顔を合わせなかったら不安になるんじゃないか?と思い、「やらしてください」的な感じで「うまくいったら皆さんでやってみましょう」というスタンスでスタートしました。
参加者は最初は12~15名、最大で20名くらい、春休みになると春季講習等で出られない子も出るので12,3名くらいという感じでした。

自宅からの第一回朝の会、飽きさせない工夫

(中村)
それで実際にオンライン朝の会というものがスタートしたわけですが、どんな感じだったのでしょうか?

(佐久間)
1回目は3月1日の日曜日に実施しました。あえて日曜日に行ったのは、お家に親がいないとパソコンやスマホの設定が出来ないかも?と思ったからで、とりあえずは参加人数を増やしたかったです。

この時に伝えた主な目的としては

  • メディアが不安を煽る中、対面出来るので少しでも安心を得るため
  • こういったツールを体験することで未来をイメージしてもらう。

の2点を伝えて、「勉強じゃないよ、とりあえず顔合わせしましょう」そしてこういったことが今後のスタンダードになっていくからやってみましょうと、Zoomの使い方(マイク、カメラ、チャット、画面共有など)を体験し、最後に可能性として、中国では街が封鎖された時でもこれを使ってオンライン授業をしていたし、コロナ以外でも例えば入院した時でも、こういったやり方でみんなとつながることが出来るから覚えておいたほうがいいよね?!という感じでした。

(中村)
これは、生徒さんと保護者の方に説明されたような感じでしょうか?

(佐久間)
第一回ということで、私も自宅、子供たちも自宅からということは、恐らくその向こう側にはお父さんやお母さんがいるから、子供越しに私の思いを伝えようということもありました。
Zoomの設定は毎日行って、毎日子供たちとメールでやりとりをしていました。そうすることで接触頻度もあがります。
また参加できない子供たちともメールでこんなことをやりましたというようなやりとりも出来ました。

ただ、朝の会はある程度日数が経つと、きっと生徒たちも飽きてくるだろうなあと思っていました。先生と毎日顔合わせ出来る、友達の顔も見れていろいろやりとりが出来る、まあこんなものかあという感じで認識が終わっちゃいそうな時にゲストにきてもらい、いろんな人にいろんな話をしてもらうということをしました。

子供たちや保護者の反応とその変化は?

(中村)
実際に朝の会をやってみて、小学5年生の生徒さんやその保護者の方たちの反応というのは、最初のほうはこうで、そこからどのように変わっていったのでしょうか?

(佐久間)
生の反応は、先生の顔を見られてうれしいとかあるんですけど、チャットを介してだったりで、実際に対面してるわけじゃないのでホンネのところはわからないですね。
それでどういう変化があったかということを説明します。

37日間連続で朝の会を続けた結果

(中村)
朝の会は春休みに入るまで続けてこられたのでしょうか?

(佐久間)
いやいや違うんですよ。これは4月6日第37回となっていますが、この日まで1日も休まずにやってきたんです。それで4月7日が始業式なので、この日が最終回ということでした。
この時までに朝の会の目的にこちらを追加しました。

  • 歴史の証言者になる!

今回のことは、絶対大きな時代の変化のきっかけになるから記録しようということで、Zoomの動画やチャットといったものを保管しておけば、10年,20年経った時に価値のあるものになるかもしれないと思って1日1日を大切にしてきたし、こんなことをしている小学5年生は恐らく他には無いよ!という話をしました。

”この1ヶ月で良かったこと”の発表において、写真をシェアして発表が出来るようになったりアンケートツールを使ってみたりしていました。
そして、再び休校になったらどんなことをしてほしいか?についてリサーチをして、保護者の方にお礼のメールをするので返信のお願いをして終わりました。

続けることを見せたことで全体導入のハードルが下がった

(中村)
ずっとやってきたことで、子供たちのデジタルツールへの慣れが進んだようですね。このきっかけがなければ出会うことがなかったかもしれませんね?

(佐久間)
特に最後までいた12,3人のスキルはすごく上がっていますし、参加してない子供たちは全然知らない世界です。
また他の学年の先生にも自由に入ってきてくださいねと言ってあったので、やってみせることが次のステップに進む上ですごく良かったです。
体験会でZoomがどんなものかを見ていましたし、分からないことがあれば僕に聞きにきて教えたりも出来たから、他の学校よりは導入に対するハードルは低かったかなと思います。

始業式、しかしその日の夜に一部緊急事態宣言

緊急事態宣言への対応、新任の先生の顔すら知らない生徒も

(中村)
それでいよいよ全職員、全学年で導入するステップに入っていくわけですけど、始業式からどんな流れだったのでしょうか?

(佐久間)
4月7日に新学期始業式が行われて、午前中授業となりましたが、この日の夜に7都府県対象の緊急事態宣言が発令されました。限定的なので岡山県は入ってないんですけど、
中には兵庫県から登校する生徒がいて翌日から登校出来なくなってしまいました。
他にも、子供が学校に行くのを怖がっているんですというような自主休校をする子もいました。

登校出来ない生徒の教育をどうするのかと考えることになり、 ICT の先生との間ではとりあえずYouTube だよねという話になりました。
一度も登校してない生徒は新しい先生の顔さえも知らないから、まずは挨拶Youtubeを作ろうということで、ICTの先生が研修をしてくれて、どうやれば動画が撮れるのか、YoutubeにUP出来るのかといったことを行いました。
職員は一人一台パソコンとIpadを貸与されているので、作法を学ぶことで「これなら授業にも使えるよね?」となり授業の動画をUPして、校内の一斉メールで1週間の限定URLを付けて送って、生徒にはオフラインで見てもらうようにしました。
そうしていく内にICTの先生がGoogleClassroomのシステムを導入し、生徒一人一人がアカウントを持つことが出来るようになりました。
これにより課題を出すことや、その回収も動画や写真を撮ってもらうことで出来て、評価や採点、返信といったことまで出来ます。

授業を動画で作っていく際の壁になったところ

(中村)
先生たちは挨拶動画を作って、そのあとは授業を動画で撮っていったようですが、そこに至るまでにおいて何か壁になるようなことはあったのでしょうか?

(佐久間)
出来る先生はすんなりと入れましたが、自身の顔を写すということが気になるという先生もいらっしゃいました。ただ授業については顔を写さなくてもできる方法があるので、カメラワークを工夫するなどしてクリアしています。

授業をしてみて分かった課題

(中村)
動画で授業を撮るのと、対面で授業をすることの違いというのはどんなことがあったのでしょうか?

(佐久間)
実際に授業をやってみると、生徒からのレスポンスがないので非常にやりにくかったです。対面ですと「わかった?」と聞いて「わかった!」と声にしたり手を挙げてもらったりで反応があったものがないわけですから。
ですので、わからない生徒たちのフォローをどうするかが次の課題だと思います。
あとは、Webの環境が整っていない生徒のフォローをどうしていくかですけど、いわゆるアナログの赤ペン先生並の2Wayを併用していくのかなと思っています。

お家の方のかかわりは?

(中村)
お家の方のかかわりはどんな感じなのでしょうか?

(佐久間)
今は4年生の朝の会を見ていますけど、メカによほど強い子供でなければいわゆる二人羽織のような感じですね。1年生もやっていますけど、ほぼお母さんと一緒という感じでしょう。出席率については、4年生が大体朝の会の出席率は25人中20人くらいと高いです。ただ一度も参加出来てない生徒はいません。
なかには兄弟姉妹で時間が被っている例もあるとは思います。
朝の会については学年ごとに開始時間をずらすようにしています。

先生方の反応について

(中村)
先生たちの間ではこれを皆でやっていこう!という感じになったのでしょうか?

(佐久間)
「やらざるを得ないよね」という感じにはなっていたと思います。特に小学校低学年以下の子供がおられる方は「そうなるよね」という意見でした。
年配の方は「私は触らなくていいんじゃない」という感じでしたが、今では全員が取り組んでいます。

他の学校、公立校で実施する際の課題は?

どんな問題点が考えられるか?

(中村)
これを他の学校、例えば公立の学校で行う際にどんな課題が考えられるでしょうか?

(佐久間)
私見ではありますが、学校の先生は保守的な人が多いので今やっていることを継続したいという考えになるので、こういったオンライン授業を導入したいという先生がいたとしても賛同をなかなか得られないという話を聞いたことがありますし、公立の場合は、都道府県の教育委員会が決裁出来ない事項なども出たりするようです。行政によっては、行政が用意したWiFiを生徒に使わせるのか?となったり、デバイスを外部とつなぐことを許してもらえない、学校のパソコンは外とつなげられるのが限定的ということだそうです。

他にもスマホやWiFiがない家庭はどうするのか?ということをおっしゃられる方もいます。
行政によっては、人数分のタブレット端末を用意するからやれ!というところもあったりします。
ウチは私学なので、「やりましょう」「よしやろう」となればGo出来るので、Webにつながらない子のことは後から考えようとなります。そこで大多数の子を止めておくわけにはいかないという考えが優先されます。

実際のオンライン授業での工夫

実践している様々な取り組み

(中村)
全国には様々な先進的な取り組みをされている先生がおられるようですが、例えばどんなことをされているのでしょうか?

(佐久間)
オンラインでこんなことが出来るんですよ!というのを実演してみましょう。
スマホを使ってQRコードを読ませると、アンケートの項目が出てくるので答えてみてください。

Mentimeterを使ってのアンケート(棒グラフ)

Mentimeterを使ってのアンケート(多い単語が文字が巨大化)

Zoomのホワイトボードで絵のしりとり

みんなでビンゴ!(イメージした単語をフリップに一斉に出す)

(中村)
クラスでやることって授業だけじゃなく、こういったレクリエーション的なことも重要でしたね。

(佐久間)
クラスでいつもやっているレクリエーション的なものをどうやってオンラインにのせるか?ということがむしろ大切だと考えています。
学習コンテンツについては世の中にいくらでもあるわけで、仲間意識とか安心感とかつながってる感を大事にすることに重きをおいています。
社会性については地域のクラブチームやスポ少で学んでもらって、オンラインで勉強して、学校では対面でなければ出来ないことだけが残っていくのかな?という気もしています。

今後の学校教育のあり方が変わる?

オンラインで出来る教育、出来ない教育に分かれる

(中村)
オンライン授業に必要な環境が全て整った前提で、文科省の指導要領も対応したとして、学校には何が残っていくでしょうか?

(佐久間)
私の考えですと、学校自体も建物だけしか残らないと思いますし、先生も教科ごとに細分化されると思います。
例えば通信制の学校のことを考えてみると、実験や体育、あとはチーム制で行うことやホームルームをする為に学校に行くことになり、もしかすると学校がなくなるのかもしれないですね。
世の中が変わっていくことに気付いていたけど、今回の件で何でもリモートで出来るということに気づいてしまったし、今のオンライン化というのはそれに向けての付け焼き刃的なものかもしれません。
社会が1月までのものとガラッと変わるのに、指導要領や教え方がそのままで良いのか?という話になるのかと思います。
オンライン化については、先生方は私がいなくても出来るようになってきたので、俯瞰した位置から次に何がくるのかの準備をしておく状況にあります。

(中村)
漢字や計算のように、家庭内学習だけでも出来るものがはっきりしてくるということでしょうか?

(佐久間)
自分に意識があれば書店に行って公文のドリル等出来るものがあります。ただマネジメントする人がいないから出来ないだけな話です。
Googleで検索すれば2桁の掛け算の解き方とか、一次方程式のこととかいくらでも動画が出てきます。究極的なことを言えば、学校で「教える」ということはいらなくなると思いますし、指導要領の道しるべはその気になればどんどん早くクリアすることも出来ると思います。

探究学習について

生徒の特性を見いだし、それを伸ばすアドバイスの場

(中村)
佐久間先生の得意分野である探究学習についてお伺いしたいと思いますが、この視点からとらえるとどうなっていくでしょうか?

(佐久間)
凄いなと思う人が2人いまして、一人目は自分の好きなことを仕事にしている”さかなクン”が究極系だと思います。もう一人は香川照之さんの”カマキリ先生”です。
共通しているのは、好きなことを”楽しんで”突き詰めていくということで、突き詰めるのに必要なスキルも積極的に身につけていくし、そこを入口にして大きなことへリーチしていくことを繰り返していることです。
子供たちを見ていて、この子達は何が好きかな?何で勝負すべきかな?とみてます。その入口は遊びであっても良いと思います。

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